我が家で1番背の高い木は、ネズミモチです。
毎年よく茂り、11月頃から無数の濃いグレーの実をつけます。
ヒヨドリやメジロがついばむので、木の下は食べ損ねた実がたくさん落ちてしまい、いつも汚れてしまうのです。
ある年の2月のこと。
その年は、ヒヨドリやメジロにあまり食べられなくて、まだ実がたくさん付いていました。
家族と、
「他に美味しい実を見つけたのかな」と話した翌日のことです。
朝早くから、聞き慣れない鳥の声がしていました。ピリリリリ、ピリリリリ。
高い鳴き声です。
小さな声がたくさん聞こえるのです。
庭に出ると、なんと!
ネズミモチの木の側の電線という電線に、ざっと200羽の鳥が、我が家の方を向いてとまっていたんです。
赤い尾羽を上下に振り、頭にはふさふさした頭飾りのある鳥の群れです。
容姿と飛来時期から、ヒレンジャクだとわかりました。
200羽のヒレンジャクがやってきた
ピリリリリ、ピリリリリと鳴きながら、入れ替わり立ち替わりネズミモチの実をついばみ、満足したら、我が家の方を向いて電線にとまって、ピリリリリ、ピリリリリと鳴くのです。

ヒレンジャクは実をついばむのが上手なのか、木の下に実はほとんど落ちませんでした。
その代わり、200羽の鳥の糞で、電線の真下が1本の線を引いたように汚れていました。
近所の方は、
「すごい数ですね」とおっしゃいました。
「ヒレンジャクという渡り鳥らしいです。道を糞で汚してすみません」
と、一応謝りました。
観察していると、朝から夜までどこかにも行かずに、ずっとネズミモチと電線を行ったり来たりしているようでした。
翌日も同様に、朝早くからピリリリリ、ピリリリリと鳴きながら、ネズミモチと電線を往復していました。
家族に、
「木の下のひどい汚れを掃除したいけど、上からヒレンジャクの糞が落ちてくるから、ちょっと無理みたい」と言ったら、
「しょうがないよ」
と、諦めムードになりました。
ピリリリリと鳴くたび、また、ネズミモチの実を食べるたびに、ふさふさの頭飾りと赤い尾羽が揺れて、かわいいんです。
「今日もたくさん食べたね。また明日」
「今日もたくさん食べたね。また明日」
そう言って就寝した日の翌朝。
布団の中で耳を澄ましても、ピリリリリと鳴く声が聞こえないのです。
あれ、なんで聞こえないの?
起き出して雨戸を開けると、ひしめき合うように電線にとまって、我が家を見ていたヒレンジャクが、1羽もいないのです。
どこに行ったの?
庭に出て見回しますが、ピリリリリのひと声もありませんでした。
ネズミモチに近寄ってみると、なんと、ひと粒残らず食べ尽くしたらしく、枝と葉だけになっていたのです。
どこから来たのかわからないヒレンジャクの群れが、我が家のネズミモチの実を見つけて、しばらく滞在していたようです。
ヒレンジャク滞在記は、珍しくて楽しい2日間になりました。


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