数カ月ごとに、他県に住む両親の元へ泊まりがけで片付けに行っています。
2年前の夏、私は車を乗り換えました。悩んだ末に、その2ヶ月後の秋口、愛犬を連れて高速道路デビューをし、初めて新しい車で他県の実家へ行くことにしたのです。

初めて実家に着いた時、高齢の両親は心配だったのでしょう、家の前の道路で待っていてくれました。私を見つけると、手を振ってにこにこと迎えてくれます。「よく来れたわね」「大丈夫だった?すごいね」と温かく労ってくれました。
家に入ってからも、両親の口から出てくるのは車の話ばかりです。「あんなに大きな車を運転して来るなんて、信じられないわよ」「車を君と同じのに、乗り換えようかな」「いいんじゃない。今の車はトランクが狭いって言ってたしね」
よく聞くと、父の乗っている車はハッチバックで、ゴルフに行く時にゴルフバッグを横にして入れられず、いつも閉口していたそうです。私の車がすっかり気に入り、同じ車に乗り換えたくなったとのことでした。
たまたま、私の今のディーラーは以前の父のディーラーだったそうで、父は「頼んでおくから、君が車を見て選んでほしい」と言い出しました。
「え?私が選ぶの?」
「そう。中古車でいいから、良い車を選んでね。来月末にそちらへゴルフをしに行くから、その日の帰りに次の車に乗り換えて戻ってきたいね」
突然の父の無理難題に驚きました。要するに、私への「丸投げ」です。
話し合おうとしても、「君になら安心して任せられるからね」と言うばかり。とにかく、自宅に戻ってからディーラーに会って相談することにしました。
自宅に戻った翌日、ディーラーに相談すると、「お父様らしいですね。お嬢様のことを信頼されているのですよ。同じ車種をご希望なのですね。何台か選んでいますので」と言ってくださり、父の車探しが始まりました。
それからは、見たことや悩んだことを逐一父に相談して進めていきました。探してはディーラーに相談し、父に報告して、またディーラーに話して探す……その繰り返しです。「来月末」という期限が迫るため、やはり焦ってしまいます。それでも時間をかけていくうちに、ようやく良さそうな車が見つかりました。
父も納得してくれて、いよいよ手続きを進め始めます。
その際、ディーラーから「高齢者が中古車を購入する際、家族への確認と同席が必要です」という話がありました。「今回はお嬢様主体で話を進められているので好都合です」とのこと。詳しく聞くと、高齢者の中古車購入時には、本人の保護と後々の契約トラブル防止のために必要なルールなのだそうです。
準備はすべて整いました。
いよいよ父がゴルフのためにこちらへ来る日です。父の意向で、実際の引き渡しの際は私の同席は不要とのことで、父と馴染みのディーラーとで全ての手続きを無事に済ませることができたようでした。
私は前もって、父のために運転支援システムの説明を図入りで解説した手紙を送っておきました。
自宅で、父が実家に戻る時間を気にしながら過ごして、到着した頃を見計らって連絡をしてみました。
「無事に戻ってきたよ。運転支援システムはいいね。とても楽に運転できたよ。色々お世話になってしまって、ありがとうね」
受話器越しに聞く父の声に、心から安堵したことは言うまでもありません。
「トランクにゴルフバッグが入りづらい」という悩みから始まった、父の突然の思いつき。正直、少し驚きつつも、父が私を信頼して任せてくれたことが、今振り返ると少し嬉しく温かい思い出になりました。

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